車同士の衝突事故
私は車で通勤しています。ある夜のことでした。2車線ある大きな通りを右折するために信号待ちをしていました。矢印信号だったので無理に右折しようとは思っていませんでした。いよいよ矢印信号が右折許可を示し、対向車線のトラックが止まっているのを確認してから右折をはじめたところ、そのトラックの影から、勢いよく軽乗用車が飛び出してきました。ヘッドライトにパッと照らされた瞬間、私の車の助手席側(左側)に衝突して、私の車は大きな衝撃を受けました。目撃者の人が心配になるほどの事故だったようです。
すぐそこにお巡りさんが!
私は衝撃で何が起こっている分からず、運転席でぼーっとしていました。このあたりの記憶があまりないのですが、すぐにお巡りさんがやって来て、大丈夫ですかと声をかけてくれました。すぐそこで駐車違反の取り締まりをしていたそうです。事故から1,2分でお巡りさんが来てくれたのは心底ほっとしました。お巡りさんも事故の様子を目撃していたそうです。こういう経過でしたので、その後はスムースに事故処理に移っていきました。幸いお互いにけがはありませんでした。
フラッシュバックだ!
お互いけがはなく、すぐにお巡りさんが来てくれて、事故処理もスムースに終わりましたので、私はトラウマになるほどではないな、と高をくくっていました。実際にその後、痛いところはなく、睡眠や食事に影響することもありませんでした。しかし、事故から4日ほどたった通勤時間のとき、例の事故現場の近くを走行していると、突然、あの日のヘッドライトの光がパッと思い出されて、心臓は高鳴り、息苦しくなりました。一瞬でしたが、たしかに、ヘッドライトに照らされたあの時の映像がパッと見えたのです。フラッシュバックです。こういう仕事をしていますから、フラッシュバックの話はよく聞くのですが、自分は体験したことがありませんでした。不謹慎にも「おー!これがフラッシュバックか!」と、貴重な体験に喜んでいる自分がいました。
ところが、やはり苦しい
フラッシュバックというのは、単にその時のことを思い出すというのではなく、それをその時の情動も含めて思い出すから苦しいのです。その時の記憶と情動とが一緒によみがえるのです。次の日も、やはり事故現場が近づくと、心臓は高鳴り汗も出てきました。その次の日も同じでした。そして、さらにその翌日は、事故現場を避けて少し遠回りをして職場まで行きました。どうも気が重くて事故現場を通る気になれなかったのです。心理的トラウマは、それを引き起こした場所や状況をさけようとする回避行動も起きることが知られています。私も回避行動をしていたのです。もし、この回避行動を続けてしまうと、次第に状態が悪くなっていってしまうことも知られています。このようなことを知識としては知っていましたが、やはり避けようとする自分がいることに気づきました。
よし、治そう
これは治すしかありません。治すには、曝露療法が有効であることも知っていましたので、それを試してみることにしました。曝露療法とは、習うより慣れろ方式の治療法です。つまり、心臓が高鳴っても、汗をかいても、気が重くても、とにかく避けるのはやめて、いつものように事故現場を通過するのです。そして、毎日、今日は大丈夫だった、今日も安全だったという経験を繰り返して、記憶を上書きしていきます。これによって、トラウマ反応は弱まっていくのです。これを試してみたところ、多少苦労はしましたが、3日くらいたったらこの症状は消えていきました。今ではぶり返すこともなく、すっかり治っています。
まとめ
たいした事故ではないと思っていましたが、小さなトラウマ反応が出現しました。そして、有効だとされることもやってみました。このようなことから、大きな事件や事故、自然災害そして戦争でのトラウマというのは計り知れない衝撃だろうと実体験からそう思います。早く戦争や紛争が終わることを願ってやみません。
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