臨床ということばについて

スクールカウンセリング

臨床とは

 臨床とは、辞書的な定義では「病人の床のそばに行くこと。また、実際に病人を診察・治療すること」(精選版 日本国語大辞典)とあります。もう少し突っこんで言うと、死の床にある人の傍らで死にゆく人のお世話をすることです。心理臨床の世界では、病院臨床というものがあり、その中でもターミナルケアやがん患者・家族の心理支援などは、まさに臨床の心理学と言えるでしょう。それでは、学校臨床という場合はどうでしょうか。

学校の臨床

 学校は元気いっぱいの子どもたちがたくさんいます。臨床という言葉で表現するには程遠い場所であるのかもしれません。学校臨床が対象とする不登校の子どもたちであっても、別に死の床にあるわけではありませんので、学校に臨床を付けるのは何か違うかなと思うときもありました。しかし、今では、臨床という言葉がふさわしいと思うようになっています。

生きている実感のなさ

 子どもたちの中には、生きている実感のようなものを感じる機会が少ないようにみえる子がいます。昼夜逆転気味で心配していた子が遅刻をしてきたので、「朝ご飯は食べたの?」と聞いてみたところ、「うーん、ちょっと食べた。パンを1個。あまり食欲がないから」などとけだるそうに答えることがあります。あるいは、不登校の子どもに「家では何をしているの」と聞くと、「ずっとYoutubeを見ている」と答える子が多いです。それはそれで楽しいようですが、生きている実感や手ごたえ、充実感というものを感じているようには思えません。死の床に臨んでいるわけではないのですが、生きている実感がなかったり、生きにくさを感じている子どもたちは少なくありません。そういう意味では、やはり臨床が必要なのでしょう。

不登校の回復期

 不登校の回復期には、生きている実感に触れていこうというような動きが出てきます。料理を作って家族にふるまったり、筋トレで身体を鍛えたり、動物を育て始めたりといったように、生命にかかわる活動が増えていくことが多いものです。以前よりも生きている実感が出てきているのではないか、と感じられるのです。本人たちの表情も生き生きとしてきます。そして、新しい活動に踏み出したり、学校に復帰したりという動きになっていきます。生きる実感を取り戻していくことを支援するのが学校臨床の仕事なのだと思います。

 

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