求められるコンピテンシー
学校で仕事をしていると、子どもの能力について考えさせられます。学習に関する能力として、最近の学校ではコンピテンシー(competency)という言葉がよくつかわれます。資質・能力などと翻訳されるものです。
しかし、能力を表す用語には、その他にもいろいろとあります。ability、skill、capacity、capabilityなどです。それぞれ少しづつ違いがあるようです。
abilityとは
これは、生まれつきの能力という感じです。知能検査ではこのあたりの能力を測っています。言語能力であるとか、数的な力、推論する力、記憶力などは、abilityといえるでしょう。運動能力や音楽的能力などもabilityの側面が強いと言えます。
skillとは
これは生まれつきというよりも、学習を通して得た能力という感じです。計算力や書く力、計画を立てるスキルや友だち関係をうまく築く能力などはskillが近いでしょう。場面に応じて具体的にどうすればよいのかといった、技術的な面の能力のことです。「間違ってしまったらごめんなさいという」などは社会的スキルの基本ですね。
capacityとは
これは、潜在的な力、まだ表には出ていないけれども、そもそもは持っている能力という感じです。何らかの理由によってまだ表には出ていないけれども、あるいは引っ込んでしまったけれども、その力は備わっている、伸びしろのある能力という感じです。まだ未熟ではあるけれども、発想の良さや習得の速さなどから見取ることができる能力です。
capabilityとは
これは、情動(感情)を抱える力とでも言えるでしょうか。capacityを表に出して粘り強くskillを高めるためには、失敗してもめげない、できないことに目を背けない、悔しい中でも持ちこたえる、といった感情(特に負の感情)に耐えつつ、「いつかきっとできるはず」といった希望を持ち続けるといった能力(capability)がどうしても必要になります。そのような能力も学力にはとても大切だと思います。
そしてcompetency
competencyは、成果を上げるための能力です。上に挙げたすべての能力を用いて、学力を高める総合力ということになるでしょうか。学校教育ではこれが求められておりまして、なかなかハードルが高い能力です。
具体的に考えてみる
不謹慎ですが戦争で考えてみます。例えば、敵が攻めてきて、それに何とか対処しなければならないとします。ある高性能(ability)の戦車が提供されました。
しかし使いこなすには能力(skill)がどうしても必要です。
高性能の能力(ability)を持つこの軍の潜在能力(capacity)には高いものがあります。しかし、スキルが不足しているこの時点では、実際はまだまだ弱いものです。
skillを獲得するときには、はやく使いこなせるようになろうと焦ったり、操作が難しすぎてあきらめそうになることもあるでしょう。でも、使いこなせるようになるはずだと思いなおしたり、勝利するはずだという希望を持ち続けることもあるでしょう。負の感情に何とか持ちこたえて耐える能力(capability)が必要になるのです。
実践的応用力
やがて戦車を上手に使いこなせるようになりました。しかし、それをどの局面でどのように配置するのが最も効果的であるかを判断する能力(competency)がないと、結局、成果を生むことはできません。
戦車を上手に操作できるだけでは成果を上げることはできないのです。competencyとは、実践的な応用力と言えます。学校ではここまでの能力を獲得することを目指しています。
スクールカウンセラーとして
スクールカウンセラーは、知能検査の結果に触れる機会が多いですから、能力をabilityとしてとらえてしまいます。学校はskillの習得を基本として目指しています。ですからその他にも様々なレベルでの能力観があることを理解しておく必要があります。
最近では、negative capabilityとして、負の感情に持ちこたえる力にも注目が集まっています。スクールカウンセラーは、このあたりを意識して支援することで、児童生徒の学習面にも寄与できると思っています。
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