二つのわたし
私たちは、少なくとも二つのわたしを同時に生きています。それは、「役割のわたし」と「本当のわたし」です。親として、夫(妻)として、カウンセラーとしてなど、「~として」生きているのが役割のわたし。そして、この役割のわたしの背後に隠れているのが、本当のわたし。
カウンセリングで有名な、カール・ロジャーズはそのように考えました。
「役割のわたし」と「こころの健康」
「役割のわたし」は、普通の生活を送るにはとても便利です。この役割はこういうものと、だいたい決められているからです。職業などはその典型例です。学校の先生、警察官、医師など、やることは決まっています。だからその役割の方から自分を規定できるのです。そうしていれば、社会からも十分に受け入れられます。
この「役割のわたし」がうまくいっているとき、私たちの心は健康で、生き生きと自信をもって生きているものです。ですから、わたしたちは、「~として、普通はどうすべきか・どうあるべきか」と、役割の方から考える癖がついています。常識から考えるともいえるでしょう。
外の規準を当てはめる
役割の方から考えるということは、自分の外の規準の方から考えるということです。この外の規準をロジャーズは、外的参照枠と呼びました。何かを判断したりうまくやろうとするときは、たいてい、外的参照枠の方から答えを出そうとします。そして、そうしておけば、日常生活は、問題なく過ごせるでしょう。
しかし、あまりに外的参照枠を参考にしすぎると、「本当のわたし」が思っていることが分からなくなったり、知らず知らずのうちに「本当のわたし」が削られたりすることもあります。
内的参照枠を育てる
カウンセリングには、外的参照枠に合わせようにも合わせられず、そんな自分を持て余している人がたくさん来談します。これまでは何の問題もなく外的参照枠に合わせていたのに、ある時からそれができなくなった、という人もおおぜい来ます。
ですから、カウンセリングでは、外的参照枠で考えるような考え方をいったん止めてみて、「本当のわたし」を基準にして、その悩みに向き合おうとします。外的ではなくて内的参照枠の方を手がかりにしていこうとするのですね。
最大の問題
しかし、内的参照枠を手掛かりにするといっても簡単ではありません。「本当のわたしはどうしたいのか」、「本当のわたしは、どう生きていきたいのか」といっても、なかなかつかめないからです。これは仕方がないことです。社会に適応するということは、「本当のわたし」を背後に追いやって、「役割のわたし」で生きることですから。いきなり「本当のわたし」を前面に押しやろうとしても、慣れていませんので難しいのです。
「本当のわたし」=「あそび」+「まなび」
「役割のわたし」は一時的なものです 。「本当のわたし」は一生モノです。ですから、「本当のわたし」をどのように育てるかということが大切になります。そのヒントになるのは「あそび」と「まなび」だと考えています。「本当のわたし」=「あそび」+「まなび」で育つというのが、今のところの、私なりの答えです。
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