いじめの早期発見が実を結ばない理由

スクールカウンセリング

いじめ問題

いじめ問題への対応は、その兆候を把握し、早期に対応することが求められています。校内研修や生徒指導部会などでも、いじめに関する議題や話題はよく取り上げられ、いじめに関するアンケート調査を定期的に行う学校も増えています。

いじめの認知件数も増加傾向にありますが、これはいじめをとらえる目がきめ細かになっていることを受けてのことなのではないかと私は思っています。

このようになされているいじめ防止対策ですが、早期発見ができたとしても、それが解決に結びつかず、いじめの重大事態に発展するケースが依然としてあります。

いじめ問題に関する第三者委員会の報告書などを読んでみると、早期発見ができていたにもかかわらず、重大事態に至るケースには次のような特徴がありそうです。

早期発見だらだら対応

早期に発見できたり、児童生徒がいじめを訴えてきたとしても、その後の対応が素早くなされず、だらだらと引き延ばされてしまうケースがあります。こういう対応は「早期発見だらだら対応」といえるでしょう。

これには、「親には知らせないでほしい」、「誰にも言わず内緒にしてほしい」という訴えに配慮している場合もあれば、「まだ大丈夫です」という言葉を安易に受け取って、対応が引き延ばされてしまっている場合もあります。

教員間で共有はされるものの「要・観察」という対応がなされ、日常の忙しさに先生たちが忙殺されているうちに、水面下で被害が拡大しているケースもあるようです。

児童生徒の気持ちに配慮するのは大切なことです。しかし、このような言葉を安易に受け取るのではなく、できるだけ家庭と協力しながら対応したいという方針を示し、児童生徒にもその方針を理解してもらうように努める、といった「大人主導の判断」も必要だと思います。

もう一つは、いじめの兆候を把握してその児童生徒の話を聞いているうちに、いじめ問題ではなく、家族への不満や発達障害など別の領域に話が展開して、結果的にいじめへの対応がおろそかになってしまうケースです。これも被害が深刻化してしまうという例と言えそうです。

早期発見ばらばら対応

「内緒にしてほしい」と言われて、教師側もそれを個人で抱えてしまい、教員間で共有されることなくいじめが拡大していくケースもあります。

「まずは自分なりに問題の全容が把握できてから情報を共有しよう」と思っているうちに、時間が過ぎていくといったことも起こっています。学校や学級が荒れている場合、それぞれの教員が、それぞれの出来事に注力しているうちに、結果的に対応がバラバラになってしまうこともあります。「早期発見ばらばら対応」です。

いじめの兆候らしいものをつかんだとしても、それが自分の受け持つ生徒でなかったり、自分の学級の生徒でなかったりする場合、担当教員に気を使い、そのままにしてしまうケースもあります。

この場合、当事者意識が薄いことも相まって、その場での軽い対応だけで終わっています。このような対応を複数の教員が繰り返しており、対応はなされているが系統立てて組織的になされていないため、被害が拡大してしまうというケースです。このような場合は、教職員間の同僚性の課題がかかわっているように思います。

具体的な備え

早期発見した後、どのように対応するのか、児童生徒から「内緒にしてほしい」と言われたらどうするのか、といった組織的な対応の手順についても、細やかに検討して準備を整えておく必要があるのでしょう。先生たちに講話をする機会があったら、私はそういうことも伝えています。

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