一次変化と第二次変化

カウンセリング

問題を解決するとは

学校では時々、問題が意外な経過をたどって終息することがあります。起こった問題に直接介入したわけではないけれど、結果的に解決してしまった、というようなものです。

母子分離が難しい子の例

小学校に入学した1年生が、一人で学校に行けずお母さんが一緒に歩いて登校をしていました。学校では、しばらくは様子を見ながらこの対応を続けていくという方針がとられていました。

登校中、この子はご機嫌なのですが、学校に着いてからが大変です。お母さんが家に帰ろうとすると泣いてしがみつき、なかなか離れようとはしません。

お母さんはスキを見てさっと帰宅したり、支援員の人が泣き叫ぶ子どもを抱きかかえているうちに帰宅したりと、母子分離のところがとても大変でした。

対応を協議

さて、どうしたものか。対応策がお母さんや担任の先生、学年主任や生徒指導主任も含めて話し合われました。「なぜ、この子はここまでお母さんと離れるのが嫌なのか」ということが話題の中心です。

「この子が幼いころに夫婦仲が悪かったのが原因かもしれない」、「いや、下の子どもに手がかかるのがいけないのかもしれない」、「そうではなくて、この子に恥ずかしいという気持ちが育っていないのが悪いのかも」。いろいろなことが話し合われました。

意外な方法で解決

この問題は意外なところから解決しました。

ある日、お母さんがどうしても用事があってこの子と一緒に登校できず、お父さんがピンチヒッターとなりました。

この子は、なぜかお父さんが帰るときはしがみついたり、泣きわめくこともなく、あっさりと離れることができたのです。

そして、それ以来、母子分離の問題はなくなってしまいました。

便器にトイレットペーパー事件

ある中学校でトイレの便器にトイレットペーパーが丸ごと入れられるという事件が頻発していました。一部の生徒がやっているのだと思いますが、決定的な証拠は見つかりませんでした。

先生たちはトイレを監視したり、生徒たちに反省を促したりしますが、なかなか決定打を打てませんでした。

作文指導で解決

そんなとき、ある若い国語の先生が授業の中で、「なぜ犯人はこういうことをすると思うか、その理由を書きなさい」というテーマで、生徒たちに作文を書くよう指示しました。

すると、「トイレに異常なこだわりがある人物のしわざ」、「幼児期のトイレットトレーニングに恨みがあり、親子関係に問題がある」など珍説が続出したそうです。

そこで、優れている内容の作文は廊下に掲示し、学校公開日には保護者にも読んでもらうなどして、大いに盛り上がったそうです。

このことがきっかけとなってこの件は起こらなくなったそうです。

一次変化

普通、母子分離であれば「どうやって母子分離を起こさないか」を考えるでしょう。トイレットペーパー事件であれば「トイレットペーパーを丸ごと入れさせないようにどうするか」という変化を起こしたいと思います。

問題aの状態かnot-aの状態かの、どちらかしか選択肢はないと考えてしまうわけです。そして、not-aの状態を導くために、その原因(なぜ?)や理由、犯人を特定して、それらに直接介入して、問題aをnot‐aに変化させようとします。

常識的な問題解決の道です。

二次変化

これに対して、原因を特定せずnot‐aに変化させることを二次変化といいます。「変化が起こりやすくなるための変化」を起こすことです。

母子分離の例のように、これまで一度も登場しなかった父親に登場してもらってパターンを崩したり、トイレットペーパー事件のように、犯人探しや説教ではなく、イベント化してみんなで楽しむといった、新しい側面から問題にアプローチするのです。

解決に原因の特定はいらない

このようなことから、解決を導くためには、原因の特定は必要ないという発想が生まれました。柔軟な発想だと思います。スクールカウンセリングでも、このような発想ができるようになりたいものです。

 

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