目標をたてよう!
わたしたちは目標を立てることがよくあります。目標を掲げて「ああなりたい」、「こうなりたい」と努力します。学校では、「1学期の目標」とか「将来の夢」とかをとおして、「どうなりたいか」を考える機会が多く、そのような経験を通して、子どもは理想の自分というものを考えていくようになります。
自意識が高まる
「どうなりたいか」を考えるといっても、小学校のうちは、それほど切実には考えないでしょう。しかし、思春期に入るころになると、自分のことが気になり始めます。そして、「どんな自分だったらよいだろうか」などとよく考えるようになります。
エネルギー源となる理想自己
ですから、自分が好ましいと思う人をモデルにして、その人の外見や振る舞いをマネして「理想とする人物像」を求めていくことがしばしば起こります。そして、その理想に近づいていると感じられるとき、自分に自信が持てて、元気も得られます。「理想とする人物像」、「理想とする自分」というものは、自分にとってのエネルギー源になるといえるでしょう。
正の理想自己
獲得したい理想とする自分を「正の理想自己」と呼ぶことがあります。「正(positive)」というのは、理想となるものをプラスする、獲得する、という意味です。「近づいて獲得したいような理想の自分」ということです。
一般に学校は、「正の理想自己」を追求して自分を成長させようという発想で動いています。ですから、目標を持たせ、夢を描かせようとするわけです。
理想なんか別にないですね
しかし、「理想なんてない」という子も少なくありません。「理想とかモデルになる人とかはいないの?」と尋ねてみても「いないですね」「べつに」と語る子どもたちです。こういう子たちは覇気がない、やる気がない、元気がない、などととらえられるかもしれません。
負の理想自己
理想自己には「正の理想自己」があるわけですから、「負の理想自己」もあると考えられています。「負の理想自己」とは、「なりたくない自己」ということです。「なりたい自分」ではなくて「なりたくない自分」ですね。「離れておきたい、なりたくない自分」という感じです。
安定を担保する「負の理想自己」
実は、正の理想自己よりも、負の理想自己の方がピンと来るという人は意外と多いものです。このことは大人も子どもも変わりません。
負の理想自己は、そこから離れていることによって、ある程度の安定が保たれるものです。「なりたくない」と思う自分がマイナスになればなるほど、つまり少なくなればなるほど、そこに安定感が生まれるのです。「あそこまでひどくないから大丈夫」という感じでしょうか。
ですから、負の理想自己が強い人は、なりたい自分をはっきりさせるよりも、なりたくない自分を明確にした方が、生きやすくなるように思います。そして、そこから離れることを動力して生活するのです。カウンセリングをしていると、負の理想自己をはっきりさせることによって、気持ちが楽になる人がいます。そういう自分で良いのだと、やっと自分を受け入れられたという人もいるくらいです。
頑張ったり努力するのが好きな人にとっては、物足りないかもしれませんが、そういう安定で良しとするという人も多いということです。この話を学校の先生にすると「なるほど!」といわれることが少なくありません。この二つの理想自己を知っていると、子どもに対する共感もしやすくなるかもしれません。
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