カウンセリングとおしゃべりの違い

カウンセリング

しっくりこないカウンセリング

 カウンセリングとはどのようなものですか、と聞かれることがあります。やさしい雰囲気のカウンセラーが、ゆっくりと悩みや話を聞いてくれる。そしてクライエントは、普段、人には話せないような悩みを話すことによって、気持ちが軽くなって元気になる、と考えられていることが多いようです。カウンセリングでは、クライエントが話をするのが前提とされますが、実はこれがなかなか難しいものです。

いざカウンセリングを受けてみても

 カウンセリングには、クライエント(来談者)がいます。クライエントは、悩みごとや考えたいことがあるから来談します。たくさん悩んだ末にカウンセリングにやってくる場合がほとんどです。しかし、たくさん悩んだはずなのに、いざカウンセリングを受けてみると、意外とうまく話せない、何を話せばいいのか分からない、ということがしばしば起こります。

話せない理由

 なぜ話せなくなるかというと、「こんな話をしてもよいのだろうか」と不安になったり、「カウンセラーからどのように思われるだろうか」と評価を気にしたり、「単なる愚痴ではないか」と自己批判をしてしまうからです。カウンセラーは、クライエントがそのように感じることを想定していますので、カウンセリングを始める前に、あらかじめ説明して、そのあたりの不安をできるだけ少なくしようと努力します。

話していても”しっくりこない”

 このような不安がなくなったとしても、うまく悩みを話せるとは限りません。その理由は、「話していてもしっくりこないから」です。このような場合、クライエントは、自分のおかれた苦しい状況や苦痛を話しますが、「本当はもっと苦しいのに伝えきれない」、「自分の気持ちをうまく言葉に乗せられない」と感じるようです。あれほどはっきりと思い悩んでいたはずなのに、その本性がつかめなくなってしまうのです。そのため、自分の悩みが分からなくなり、「あれ、たいした悩みではなかったのかな」と考えてしまうこともあります。悩みというものは、はっきりと言葉に変換できないから、悩みになっているのです。逆に言うと、言葉に変換できるならば、対応のしようもあります。

”心を込めて”話せるように

 しっくりこないということは、「こころを込めて話せていない」ということでもあります。カウンセリングの効果を測る研究によりますと、クライエントが「何を語るか」よりも、「どのように語るか」の方が効果に影響するという見解もあります。いわゆる深い話をすることがカウンセリングの効果を高めるように思われるかもしれませんが、必ずしもそうとは限らないのです。むしろ、「どのように話すのか」、つまり「こころを込めて話せているか」の方が効果を高める場合がしばしばあるのです。そしてそれは、日常のちょっとしたささやかなことでもよいのです。

言葉と一つになる感覚

 こころを込めて語っているときというのは、自分と言葉とがぴったりと一致している感覚になります。そして、そのようなとき、私たちは自分のこころを取り戻して、自分の力を回復していきます。ですから、カウンセラーはクライエントが心を込めて語れるように支援しようと思っています。この辺りが、カウンセリングと普通のおしゃべりとの違いの一つだといえるでしょう。

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました