ある面接場面(仮想例)
ある面接場面があるとしましょう。クライエントは母親です。主訴は、子どもがスマホばかりしていてやめようとしないとのこと。いろいろと話しているうちに、この子は歯医者に通院していたけれども、スマホばかりをしていて、通院を面倒くさがり途中で行かなくなってしまっていることが判明しました。
もう2か月ほどキャンセル続き。歯の詰め物が取れかかっているけど、それでも病院には行きたがらないようでした。先日はやっとのことで病院まで連れて行ったそうです。でも今度は駐車場で車から外に出たがらず、結局、病院には行けずじまいだったそう。
なかなか言うことをきかないこの子をどうすればいいでしょうか、というのが相談の中身です
さて、どうするか
多くの場合、クライエントはうまくいかなかったことを語りがちです。それはそうです、だから相談に来ているわけですから。しかし、カウンセラーは、クライエントの話をスーッと理解するのではなく、もう少し、一つ一つの場面を明確にしようとします。特にうまくいったところは詳細に聞きたいところ。たとえば、2か月近くも行けなかった病院の駐車場まで行けたわけですが、どうしてこういうことができたのでしょうか。
駐車場まで行けたわけ
この子は、徒歩通学をしているそうですが、母親が車で送り迎えをすることも多いそうです。ですから、その日も、子どもが下校する時間に車で迎えに行き、そのまま病院まで行ったそうです。途中経過がはっきりしてきました。しかし、子どもは病院に行くことを知らされていたのでしょうか。同意していたのでしょうか。
同意なし
子どもと母親の間には合意はなかったそうです。ふつう「今日は車で迎えにいって、そのまま病院に行くよ」といった話し合いはありそうですが。子どもからすると、いつものように帰宅する思っていたら、不本意に駐車場まで連れてこられて、だまし討ちにあったように感じたと思います。母親はこのようなやり方に問題は感じていなかったようです。というより、このようにしないと、子どもは言うことを聞かないそうです。
スマホについても頭ごなしに「やめろ」というばかりになっていて、子どもと合意形成したり、子どもの気持ちを汲み取って選択肢を出したりというかかわりは、あまりしてこなかったということも分かってきました。
選択肢を示す
ということで、スマホの取扱いよりも前に、歯医者にどう通院させるかということに焦点が当たっていきました。どのように子どもと合意形成するかということが目標です。このような場合、いくつかの選択肢を示して子どもに決めさせるという手があります。本人も歯医者のことは気になっているようですから、どれだったら許せるかということを示した方がよさそうです。
この子は学校は好きではなく勉強も苦手。とくに朝は苦手だそう。であれば、学校を早退したり遅刻して歯医者に行くというのはどうでしょう。合法的に(?)苦手な勉強や学校からも逃れられます。
給食は大好きな子ということですから、献立や学校の時間割を見ながら、いつ行くかということを決めるのもよさそうです。
通院したらほしいものを買ってあげるという選択肢はどうだろうか、という話もありましたが、これはやめることにしました。報酬を与える方法は、次はより高価な報酬を与えなければ利き目がなくなるからです。
お父さんのことを、尊敬しつつも怖いと思っているようであるならば、お父さんに登場してもらうのもよさそうです。あるいは大好きなおじいちゃんやおばあちゃんがいるならば、その人と一緒に行くのもよさそう。
いくつか話し合われましたが、子どもの性格を考えて、早退または遅刻ということで子どもと話し合うことにして、そのさいは献立や時間割を見ながら話し合うことにしました。
通院できました
次に母親に会うと、「通院できました」とのこと。子どもは遅刻も早退もしたくないので、放課後に行くと自分から言い出したそうです。この子も病院に行きたくないわけではなく、不意打ち的なかかわりに不満があったようです。
自分で考える力を身につけるには
ちょっとしたメリットを示しながら選択肢を出して話し合うということは、ある程度こちらが答えを用意してあげるということです。「それでは自分で考える力が身につかないではないか!」と思われるかもしれませんが、自分で考える力は、まずはやらせてみて、その後を振り返ることで身についていきます。まずは動機づけて動かしてしまうことが大切なことも多いものです。
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