どうして感情なんかあるの?

学ぶということ

感情なんかいらない!

 気持ちが落ち込んだり、罪悪感に苦しんだり、自分を卑下したりすることがあります。カウンセリングは、そのようなネガティブな感情に苦しんでいる人と行われることが多いものです。ある青年クライエントさんは「どうして感情なんかあるの?」という素朴な疑問を持っていました。

 もともとは「どうしてこういう苦しい感情が続くのだろう」ということを話し合っていたのですが、そこから「そもそもどうして感情なんかあるのだろう」という内容に変わっていきました。「感情さえなければ、これほど苦しまないのに」ということでしょう。

基本感情とは

 基本感情という考え方があります。怒り、嫌悪、恐怖、悲しみ、驚き、喜びの6つ、あるいは、これにもう一つ軽蔑をつけて7つとされたりするようです。「喜び」意外はネガティブ感情ですね。そう考えると、「感情さえなければいいのに」という気持ちもわかります。

 基本感情というのは、どの民族であってもどの文化で生きていても、同じように感じる普遍的なものらしいです。ですから、基本なのですね。おそらく哺乳類であれば、やはりこの基本感情は持っている動物が多いように思われます。

ネガティブ感情ばかりのわけ

 ネガティブ感情ばかりが基本であるのには理由があるとのこと。それは、「生存維持につながるから」です。進化論で有名なダーウィンはそう考えたようです。

 敵に怒りを感じたり、危険なものを嫌悪したり、恐怖で身構えたり、失ったものを悲しんだりというように、ネガティブ感情があることによって、生存可能性が高まるそうです。

 そして、ネガティブ感情の役割は、今やっている活動から瞬時に思考と行動を切り替えて、迫りくる危険に意識を焦点化するためにあるようです。

たとえば

 腐ったものを口にしたら一瞬で吐き出すでしょうが、これは嫌悪の働きです。料理中でも勉強中でも、地震の「ごぉーっ」という地響きを聞くと、瞬時に身構えますよね。これは恐怖の働き。今やっている活動などそっちのけで、思考も行動もこれから起こる地震に備えようとします。地震に集中するわけです。

悲しみは?

 悲しみは何かを失う、喪失することへの反応です。食べ物を失う、仲間を失うということに伴う感情です。食べ物も仲間も生存に関わる大切なことです。これらを失わないようにすることは、とても生存維持に関わります。

放っておくとネガティブ感情にやられてしまう?

 感情の基本的な役割が生存維持にあるとしたら、そもそも人はネガティブ感情の方を優先して強く感じるようにできているのでしょう。ですから、われわれは、対策を講じておかないと、すぐにネガティブ感情にやられてしまいかねません。まずは、そういう前提をもっていた方がいいのかもしれないな、と思います。

ポジティブ感情の性質

 基本感情のうちポジティブ感情は「喜び」だけです。このポジティブ感情の役割は、思考や行動を拡張することといわれています。新しいことにチャレンジしたり、新しいやり方を試したりという行動を促進する原動力になってくれるのです。社会的成功に結びつくと考えられています。

「喜び」を感じるものを探し続ける

 「喜び」が基本感情にあることは、ネガティブ感情を抑えたり弱めたりするヒントを与えてくれているように思います。

 つまり、自分が「喜び」を感じるものを常に探して見つけ出し、それを試してみることが、ネガティブ感情を抑制するのではないかということです。

 人は成長とともに、自分が喜びを感じたり、興味を持ったりするものが変わっていきます。ですから、常に「喜び」を感じられるものを見つけておくことは、ストレスに対処したり、ストレスの影響を弱めてくれたりすると思います。

トータルなストレス・マネジメントの必要性

 これからの時代は、ますます自分なりのストレス・マネジメントに意識を向けていく必要があると思います。それは、呼吸法や考え方のくせを直すという心理的なものから、どこに住むのか、誰と住むのか、どのように働くのかといった社会的なことも含めて、ストレス・マネジメントになるという意識をもつことかもしれません。ストレス・マネジメントや心の健康というものをトータルに考えていかなければならないと、最近よく考えます。

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