良い子の不登校

カウンセリング

不登校いろいろ

学校に行けない子の背景にはいろいろなものがあります。友人とうまくいかない、先生が怖い、勉強ができないなどです。

その中には「良い子の不登校」というものもあります。こういう子は、友だち関係は良好です。それどころか、リーダーとして一目置かれており、先生たちからの信頼も厚く、成績はトップクラス。はっきり言って申し分ありません。

しかし、ある日突然、凧の糸が切れたように、急速にコントロールを失って登校できなくなってしまうのです。

優越コンプレックス

その原因を心理学的に捉えるならば、「優越コンプレックス」と呼ばれる心の状態になっていると考えられます。アドラー心理学の用語です。

これは、今のこの高いポジションから降りることなど決してできない、負けることなど絶対に嫌。いつもしっかり者でいなければならないし、自分でもそうありたいと思っている状態です。

成績も同じ。トップクラスでなければ自分を許せないし、成績が落ちることはとても嫌なこと。惨めな気持ちになるにちがいないし、そんなことには耐えられない、そんな自分は絶対に嫌だ。そう考えてしまうのです。「まあ、いいや」にならないのです。

だから、がむしゃらに頑張ります。でも、いつも不安です。今は周りよりも優越しているポジションですけど、明日はどうなるか分かりませんから。

100点をとっても

こんな状態だと、今回の定期テストの点数が100点でも、そのことを喜べませんし満足などできません。それよりも、次回のテストでは落ちてしまうのではないか、転落してしまうのではないかと考えて、不安が高まり苦しみます。

そして、いてもたってもいられず、とにかくがむしゃらに頑張ります。こういう人は、自分でも「完璧主義」と自覚しているものです。それ以外のあり様を考えることができないのです。

優越コンプレックスの人に対して周りは?

優越コンプレックスはとても苦しいものです。頑張って、頑張って、いつかはエネルギーが切れて枯渇してしまいます。そうなると多くの場合、教室にいるのが苦しくて保健室に逃げ込んだり、別室での登校を希望したりするようになります。

こういったSOSが出せるのならまだいいのです。SOSを出せず頑張り切った挙句、突然、学校に行けなくなることもあります。これがいわゆる「良い子の不登校」という状態です。

周りの人たちは、「この子は頑張れる子だから」と判断して、何とか頑張らせようとするものです。そして、ここが苦しいところなのですが、本人も「周りの人の言うとおりだ」、「悪いのは自分だ」と考えます。

しかし、どうしても周りの期待に応えることができないのです。もはや、そんなエネルギーがわいてこないのです。ですから、こういう周りの反応によって、本人は「期待外れと思われるのではないか」、「ダメな奴と思われるのではないか」とさらに苦しんでいくのです。

自己治療する生徒

ただし、こうやって苦しんでいる状態というのは、実は自己治療が始まっていると言えます。なぜならば、期待外れの自分をさらし、弱々しく頼りない自分をさらしているからです。

高い位置から降りられないと苦しみながらも、実は、そういう自分をさらすことによって、高い位置から降り始めているのです。これまで完璧だった子が、教室に行けなくなり、保健室や別室で過ごす時間が多くなるわけですから。

無意識の力

もちろん、本人が意識しているのは、一刻も早くこういう状態から脱して、これまでのように頑張りたいということです。しかし、その人の「生きる知恵」とも呼べる無意識の領域がそれを許さないのです。

心の無意識の領域が、頑張らない方に向かって頑張っているのです。そうやって優越コンプレックスの治療をしているのです。無意識の領域は、「このままいくと、いつか本当に取り返しのつかないことなるぞ」ということを察知しているのでしょう。

本人の”自然”にまかせる

ですから、たとえば、本人が「教室ではなく保健室で休みたい」というのであれば、それをさせてあげると良いのです。むしろ、「頻繁に保健室で休むことは続けた方が良い」といって、その環境を整えてあげた方が良いこともあります。

そういう例外的な対応をしばらく続けると、すでに「完璧な自分」からは遠い姿でいる時間が長くなりますから、自分にはできないこともある、弱音を吐くこともある、完璧でもない、ということをいつの間にか自分に認められるようになっていきます。優越コンプレックスが弱まっていくのです。

なぜかわからないけどいつの頃からか苦しみ始めているといったように、「自然とそうなっていること」に意味を見出し信頼して、本人の流れに任せてみるのも、普通の人ではなかなかできない、高度な心理職の仕事になります。

心理職の中には、心の苦しみはその人にとって、とても大切な意味があるという人もいます。

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