オンラインでの学び

学ぶということ

オンラインでのコミュニケーション

「間身体性から見た対面とオンラインの会話の質的差異」(田中彰吾・森直久先生,2022,こころの科学とエピステモロジー,4,2-17)という論文を読みました。オンラインと対面の会話ではどのような違いがあるのかについて書かれた論文です。

オンライン会議などをしていると、「目が合わない」、「相手の表情が読めない」ということを経験する人は多いと思います。

オンラインは便利ですけど、対面でのコミュニケーションとは違ったむずかしさがあります。この論文をもとにして、その特徴をいくつか挙げてみたいと思います。

行動の同調

「行動の同調(behavioral matching)」というのは、こちら側の行動と相手の行動が同じになるという影響関係です。こちらが腕を組んで話すと、いつの間にか相手も腕を組んで話すということがあります。そういうものを「行動の同調」と言います。

こちらがあごを触ると相手もあごを触るといった「行動の同調」もよくあります。オンラインではこういうことが少なくなるようです。行動の同調は同じような感情状態にあることを示す一つの指標ですがそれが弱まるんですね。

相互作用の同期

「相互作用の同期(interactional synchrony)」とは、お互いの意図に応答する行為が、時間的にかみ合いながら進行するというコミュニケーションです。

こちらが声を潜めて話すと相手は上体を近づけるというように、お互いが相手の意図に応答しながら、相手と違う行動をかみ合わせながらコミュニケーションが進行することです。

横断歩道で歩行者が手を挙げたら、ドライバーはブレーキを踏む、モノを渡そうとしたら相手は受け取ろうとするなど、相手の意図に応答しつつ、違った行動をかみ合わせながらコミュニケーションが進行します。お互いに向き合って行う社交ダンスをするような感じです。

この「相互作用の同期」も、当然、オンラインではなかなかできません。

covid-19が収まって

covid-19の間、小学校では、鬼ごっこやドッジボールなど、直接・間接的な身体接触がある遊びは禁止されていることが多かったようです。

そして、いよいよcovid-19が収まり、禁止されていた身体接触を伴う遊びが解禁されました。先生たちは、さっそくドッジボールや鬼ごっこをさせようと思ったようです。

しかし、中にはドッジボールでボールを避けようとしない子がいたり、鬼ごっこでは逃げようとしない子がいるなどして、遊びが成り立たなかったこともあったようです。

ボールを避けるように、逃げるように促さなければ遊びが成り立たなかったという話を、当時の学校ではよく聞きました。

遊びは「相互作用の同期」によって成り立ちますが、それが成り立たなかったようです。相互作用を同期させるのは、経験や学習がとても大切だということが分かる出来事でした。

場の力の弱まり

オンラインでは「場の力」も弱まります。「場の力」とは、対面で活動を共にしていて、いつの間にか場そのものが自律性をもち、一種のシステムとして展開するようになることを意味します。

人々が対面で会っていると、その場がある楽しい雰囲気となって、人々の発話を引き出すシステムとして自律的に動き出し、その場の参加者たちは、その場の雰囲気に自らを預けることによって発言が促進されることがあります。

”場が盛り上がる”といった場面ですね。場が盛り上がっているときには互いの一体感や連帯感のようなものも高まりますが、そういう場が生まれにくいということですね。

場の力には、”場に飲み込まれる”、”場が引き締まる”、”場が固まる”ということもあります。そのような「場の力」があるわけですけど、オンラインコミュニケーションでは、そのような場の力が弱まります。

対面とオンラインでの学びの違い

教室で子どもの学習を促すためには、例えば「凛とした雰囲気」が教室の中に染み渡ることが必要になります。この「場の力」を作り出せる先生は力がある先生なのでしょう。オンライン授業では、このような場の力を創発させることが難しいと思います。

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