承認よりほしいもの

カウンセリング

承認欲求

 現代人は承認欲求を満たしたいという人が多いそうです。自分が食べたものや行った場所、遊んだ人のことなどをSNSで投稿し、そこに「イイネ」がたくさんつくことによって、自分を肯定できるのだそう。他者評価が心の健康に影響するということがよくわかります。

ほめて育てよ

 学校では、「ほめて育てよ」という言葉がはやっています。叱るよりもほめることが大切だということです。

 できないところや苦手なところに焦点を当てて、そこを強化するというのは、悔しさや辛さに直面させることにもなります。ですから、心痛を抱える力がないと途中で嫌になってしまい、苦手を克服するどころか、逆に挫折体験になってしまうかもしれません。

 だから、できているところや得意なところをほめて育てて、結果的に不得意や苦手の部分を小さくしていこうという発想です。これはこれで一理ありますね。

肯定してほしい

 「承認欲求」も「ほめて育てよ」も、相手を認めるということだと思います。そして、この積極的に認めると似たカウンセリングの用語として「無条件の積極的な関心(unconditional positive regard)」というものがあります。

積極的な関心

 カウンセリングで有名なカール・ロジャーズという心理学者は、カウンセリングによって、クライエントのパーソナリティが建設的に変化する必要十分条件を6つ挙げました。「ロジャーズの6条件」などと呼ばれて、非常に有名です。

 その一つに、「無条件の積極的な関心」があります。条件を付けることなく、クライエントに積極的に関心を向けるというものです。「これを達成したから認める」、「期待通りだったから認める」というように条件を付けるのではなく、条件を付けずに積極的に関心を向けるというものです。

 このpositive regardの部分は、「肯定的関心」、「肯定的配慮」などとも訳されることがあります。

学んでほしい欲求(learned need)

 『Theories of Counseling and Psychotherapy』という本を読んでいて、このロジャースの「積極的関心」に言及している箇所がありました。この本によりますと、ロジャーズは、「我々には愛情(affection)を求める基本的な欲求がある」と唱えていたそうです。そして、これを「積極的な関心を求める欲求(a need for positive regard)」と名付けたということです。

 ロジャーズは、他者からの愛というものを「他者に自分を学んでほしい欲求」であるとしています。そう考えますと、クライエントは、カウンセラーに「積極的な関心」を向けてもらうことによって、「自分のことを学んでもらっている」という感覚になっていくのだと思います。

承認欲求とのちがい

 positive regardは、ときに「クライエントの承認欲求を満たすため」や「クライエントをほめて育てるため」に行われるものと勘違いされますが、そうではないのです。そもそも、こういう態度のカウンセラーは、上から目線でなんだか嫌ですよね。

 「このクライエントさんはどういう人なのだろうか」ということを積極的に学ぼうとすること、それがクライエント理解を促進するのです。

承認欲求が満たされない理由

 承認欲求を追い求めても、なんだか心が満たされず空虚である人は、求めるべきは承認欲求ではなくて、「自分のことを学んでほしい欲求」、「本当の自分のことを知ってほしい欲求」なのかもしれません。

 カウンセリングというのは、カウンセラーが学んだクライエントの一側面をクライエントに伝え、それをクライエントが受け取り、そして深めていくことを通して展開していきます。そのプロセスは、「自分のことを学んでほしい欲求」が満たされていくプロセスとも言えるように思います。

 

 

 

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