殺気を感じられるか
本で読んだか、テレビで見たか忘れましたが、なるほどねえと感心した話があります。それは、明治時代(?)の新聞記者が当時の剣の達人にインタビューした内容についてでした。その新聞記者が剣の達人に対して、次のような質問をしたそうです。
「よく漫画などで、剣の達人が街道を歩いているところを、大きな松の木の後ろで刺客が待ち構えて、まさに襲おうとする数秒前に、達人が”むむっ、殺気!”などと殺気を感じて身構え、それによって危機一髪、敵を倒して難を逃れるというシーンがあるが、あのようなことは本当にできるのでしょうか?」という質問だったようです。
さて、達人は何と答えたか。
「できる。ただし条件がある。」
達人の答えは「条件さえ整えばできると思う」でした。その条件というのは、”その剣の達人が、毎日同じ街道を、同じ時刻に歩いているならば”、というものだったそうです。
つまり、ルーティーンとして、毎日同じ街道を同じ時刻に歩いているならば、ちょっとした微妙な変化を素早く察知して、気づけるのではないかということのようです。このような条件がなければ、やはり殺気を感じることは難しいのではないかという答えだったのです。
ルーティーンの大切さ
毎日行っていることであるからこそ、ちょっとした微妙な変化を素早く感じ取ることができる、ということだと思います。このことはカウンセリングにも通じるところがあります。
われわれカウンセラーは、毎週、何曜日の何時から、この部屋で、このクライエントと会う、というスケジュールの中でカウンセリングを行います。そのように場所と時間を決めて、できるだけその設定を守ろうとします。
それだけでなく、会う部屋も一定に保とうとするので、模様替えをしたり、季節の花々を飾ったりということもあまりしません。いつも同じような服装をしているというカウンセラーもいます。とにかく、一定を保とうとするのです。
その理由は、剣の達人と同じです。クライエントの微妙な変化を察知しやすくなるからです。ルーティーンというのは退屈で面倒と思うこともありますが、いつもとの違いを素早く察知して対応するためには、とても大切なことなのです。
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