教室に入るとき
スクールカウンセラーをしていると、教室を観察してくださいと言われることがよくあります。しかし、なかなか教室に入りにくいこともあります。
「この空気感は大切にしたい」、「そっとしておきたい」という気持ちになるからです。
廊下から見る教室
2学期も終盤にさしかかった12月のある日。小学校1年生の教室に向かいました。
階段を下りていくと、そのまま正面に教室があります。ですから、教室の様子が少しだけ見えました。
どうやら子どもたちは、思い思いに課題に向かっているようです。腕を組んで考えている子、鉛筆で頭をかきかきしながらノートに何かを書いている子。
教室の外からそっと中をのぞいてみると、ほかの子どもたちも課題に没頭している様子です。
教室の前では、担任の先生が穏やかな様子で丸つけをしています。
教室の中からは、小さな暖房の音と先生の丸つけをする音だけが、心地よいリズムとなって聞こえてきます。教室はしっとりとした空気で満たされています。
その中に私が入っていくと、この空気感を壊してしまうでしょう。そんなことはしたくありません。だから、もう少し時間がたってから教室を観察することにしました。
教室の空気感
教室には独特の空気感というものがあります。教室に入った瞬間にそれが分かることもしばしばあります。
教室観察に行くと、すぐに私に気づく子が何人かいます。そのとき、ニコッと笑ったり、こちらに興味を示したりする子がいます。「キリン先生が来た!」と興味津々。
そうやって私を迎え入れてくれるのです。
しかし、これはほんの一瞬のこと。子どもたちはすぐに授業に戻っていきます。
そうこうしているうちに、先生が冗談などを言って子どもたちを笑わせると、その瞬間、やはり何人かの子がこちらの様子をうかがいます。「うちらの先生、面白いでしょ!」「キリン先生も面白かった?」と言わんばかりです。
こういう教室は、非常に暖かく子どもたちも生き生きとしています。
雑然とした教室
このような教室ばかりではありません。私が教室に入っても全く興味を示さない子どもばかりの学級もあります。全く知らん顔です。
別に無視しているわけではありません。周囲に興味がなく無防備なのです。子どもたちはバラバラで、意識があちらこちらに向かっています。
「この教室は自分たちのもの」という当事者意識がないと言いますか、所属感がないと言いますか。そういうものが育っていないのです。
こういう学級はのちのち問題やトラブルが多く発生します。
要注意人物はすぐにわかる
私を見てにらみつけるような子どもは要注意。非常に警戒心が強いからです。そのような子は要注意人物だったりします。
「教室観察では〇〇君を見てください」などと言われることもあります。私はその〇〇君の名前を聞くのは初めてだったりします。もちろん顔も見たことがありません。
でも、教室に行くとすぐにわかることは意外と多いのです。私が教室に入っていった瞬間、あるいは教室に入る前から、疑いのまなざしで私を見ている子どもがいるからです。
そして、その子こそ、〇〇君だったりするのです。
教室観察では、入室前の一瞬に情報が凝縮されていることがしばしばあります。入室の一瞬は大切です。

