問題の原因
問題を解決しようとすると、その原因を追究したくなります。しかし、原因が分かったとしても問題を解決することができないこともしばしばあります。
不登校一つとっても、本人の性格、学力不振、過去の傷つき、昔の夫婦仲の悪さ、これまでの過保護・過干渉、なまけ、引っ越し、過去のいじめなど、探し出せばきりがありません。
そもそも原因を特定できるかは分からず、特定できてどうしようもできず(過去のことなので)、さらに原因は一つとは限りません。
ダイレクトに解決を
ですから、原因の追究や問題を考えることを止めてしまって、直接的に解決を目指そうという心理療法があります。ソリューション・フォーカストアプローチ(解決志向アプローチ)といいます。以下、ソリューションと略記します。
ソリューションは、「問題の引力圏から外に出ていく」(宋大光・東豊・黒沢幸子 『もっと臨床がうまくなりたい』 遠見書房 2021、p.205)ことを目指します。「問題の引力」は強いですから、すぐにそこに戻ってしまいます。そうならないように、ソリューションでは問題に取り組むのではなく問題を切ってしまって、ダイレクトに解決の構築(solution building)を目指します。
解決された姿
しかし、解決を構築するというのは難しいものです。例えば、不登校の子どもを持つ保護者に「問題が解決された姿をイメージするとどんな姿ですか?」と尋ねても、答えは「子どもの不登校がなくなって元気に学校に登校している姿です」となります。
ゲームが止められない子どもがクライエントであれば、「ゲームをやめること」が解決されたイメージだったりします。これではだめなのです。なぜなら、問題から離れているようで離れていないからです。「問題の引力圏」の内側にとどまったままで、「外に出ていく」ことができていないからです。
このことが分かっていないと、「じゃあ、ゲームをやめるためにできることを考えよう」となってしまって、結局、問題に戻ってしまいます。
その先の未来へ
ソリューションでいう解決された姿というのは、「その問題がなくなった後」の姿です。不登校がなくなって元気に学校に登校している「その後、どうなっているのか」を具体的に構築していくのです。ゲームが止められるようになって問題が解決された「その先の未来」に飛ぶのです。
そしてそこから「今これから」に戻ってきます。原因がなくなった先に未来が開けてくるのではなく、構築された未来があって、そこに向かって歩んでいくのです。
ソシューショントーク
これがうまくいくと「本当はこうなりたい」、「こういうのが理想だ」という姿が出てくるものです。それは、「問題が解決された姿」とは切り離された、全く別のものです。
たとえば「ゲームが止められたら本当は楽器をやってみたい」とか、「息子の不登校がなくなったら仕事に出てみたい」といったものです。そして、楽器や仕事は、今からやっても構わないわけです。これらは、今の問題がなくなった先に開けてくる未来ではありませんので。
では、それをやってみましょう、そして、それが少しでもできたならば、その時間は一部問題はなくなった時間ですよね、という感じになります。
そのように解決構築に向かっている話はソリューショントークと言います。普通、クライエントはプロブレムトークをするわけですが、それをタイミングを見ながらソリューショントークに切り替えていくわけです。その切り替えはセラピストの役割になります。
焦らず、ゆっくりと
ソリューショントークへの切り替えはセラピストの役割ですが、クライエントの話をよく聴かないうちから、すぐにそちらに切り替えてしまったら、クライエントは興ざめします。
「このセラピストにはには、なかなか話が伝わらないな」、「ちゃんと話を聞く気はないのかな?」、「話がそらされてばかりだな」、「問題がなくなった後のことなどそんな簡単に考えられないよ」といった感じです。
ですから、解決構築をするといいつつ、それはじっくり進むプロセスであることも理解しておく必要があります。傾聴は基本中の基本です。