問題持続システム
問題持続システムというものがあります。個人療法の場合、これはクライエントが問題を語り、カウンセラーがさらなる詳細を尋ねて、結果的に双方とも問題の話ばかりをしているようなときに創出されます。
問題の話ばかりする相互作用(システム)ができてしまうわけです。
問題持続システムへの介入
そこでシステムズアプローチは、この問題持続システムに介入します。介入がうまくいき、このシステムが崩れた場合、クライエントは問題に対する語り口を変えていきます。
クライエントの語り口が変わるためには、問題の語りが続くような質問をやめて、新しい語り口が出てくるような質問を投げかければよいわけです。
質問を投げかけるのはカウンセラーですから、カウンセラーが変わることによってクライエントも変わるのです。
治療システムの創出
カウンセラーが変わることによって相互作用の在り方が変わり、問題に対する語り口が変わっていくような相互作用のことを治療システムと呼びます。
ブリーフセラピーでは、ミラクルクエスチョン、分身の術、スケーリングクエスチョン、タイムマシーンクエスチョンなど、さまざまな質問の仕方が開発されています。
これらの質問によって治療システムを創出しようとするわけです。
あせらず丁寧に
そのようなことが分かってくると、クライエントの語り口を変えようとして、すぐに上記のような斬新なクエスチョンをしてしまいがちです。もちろん、クライエントがそれに乗ってくるのであればよいのですが、普通はなかなか乗ってきません。それどころか場がしらけます。クライエントの語りがないがしろにされるからです。
「焦ってはいけない」のです。
クライエントの語りをないがしろにしてはいけません。矛盾するようですが、クライエントの語る問題はじっくりと丁寧に聴く必要があります。ただし、クライエントの語るままに、ずっと問題ばかりを聴くわけではないということです。
クライエントの物の見方(枠組み)を把握し、ヒト・モノ・コトとの関係性も把握し、さらにそれをリフレーミングしたりしながら、資源やニーズを掘り起こすように聞いていきます。
ジョイニング
そのように焦らず丁寧に、クライエントの枠組みの中で語りを傾聴して、クライエントと仲良くなることをジョイニングと言います。
カウンセラーとクライエントの関係が良好に構築され、その相互作用が良好になるにつれて、カウンセラーの影響力は強まっていきます。ジョイニングという基礎工事によって治療システムの土台を作っていくわけです。
ジョイニング中にしていること
カウンセラーがジョイニングしている間、クライエントは自分の問題を語っていることが多いものです。解決したいと思っている問題です。上述したように、この時カウンセラーは、それを受け身的に聴いてただ受容しているだけではありません。
効果的な治療システムを作るべく、クライエントの語りの範囲内で自分を自在に変えながら、クライエントと良好な関係を構築して、システムへの影響力を強めています。
ジョイニングだけで十分
クライエントは問題を語りその問題にはまり込んでいるわけですが、それはそれで必要なことです。問題にはまり込んでいればいるほど、のちにカウンセラーがする介入(視点を変える質問)の効果が高まりますので。
達人の域に達している場合、ジョイニングしているだけで、どんどん効果的な治療システムが構築されていくと思います。
達人まで行かない場合は、視点を変える質問が引き起こすギャップというか衝撃を使って、クライエントの語り口を変えることができるのでしょう。言うは易し行うは難しですが。