「復活ののろし」としてのカウンセリング

カウンセリング

単発で来談するクライエント

クライエントさん中にはいろいろな人がいます。「そういえば単発で来る人もいるなあ」ということに気づきました。4,5か月に1、2回だったり、半年に1回だったりするのですが、とにかく単発で相談に来るのです。長くても2,3回で終わって音沙汰がなくなり、またしばらくしたら来談するという感じです。

そのことは自体、全く問題はありません。単発で来てくれる人は、日常の中で上手にカウンセリングを活用しているのだと思います。

苦しい心の内を語るけど

お互いに「久しぶりですね」などと言ってカウンセリングは始まります。話を聞いてみると重たい内容だったりすることは少なくありません。表情は暗く不安げですから、そうなったいきさつを丁寧に聞いていきます。

そのような時間が20~30分くらい続くでしょうか。次第に、こちらも「そういえば、このクライエントさんは、以前このようなことで参っていたな」であるとか、「こういう感じで回復していったな」ということを思い出していきます。ですから「そういえば、あの件のその後の経過はどうなったの?」などと少し時間をさかのぼったりもします。

心のコリをほぐす

そういう話をしながら、少しずつ今の問題から時間的に離れていくことによって、少し視野を広げてもらいます。「この問題はこのくらいの時間が経過したら、周りの環境はこのように変わっていくと予測できるから、期間限定的なものかもね」などと未来を想像して、見通しを一緒に立てたりすることもあります。

「以前はこういう悩み方だったけど、今はこういう悩み方になっていて、悩み方が変わりましたね」などと、その人の”悩み方の変化”に目を向けたりしながら、その人の成長というか変化に焦点を当てることもあります。

「少しはマシに思える時や場所はないか」と質問して、解決の糸口はないだろうかと考えたりもします。クライエントさんが一人では考えそうにないことをあれやこれやと質問して、”心のコリ”をほぐしてあげたいという気持ちです。

課題を探す

そのような話をしながら、今の生活の中で「やるべき課題」に目を向けていくこともよくあります。悩みはあるけど、やらなければならないこともたくさんあるというのが日常です。ですから、そちらにも焦点を当ててみるのです。

単発でやってくる人は、日常生活をそれなりにこなしながら悩んでいることが多いので、やれていることも結構あります。そちらのことも確認しておきたいものです。

「苦しいながらもやることはやれている」という場合、それはかなりの工夫を凝らしているはずです。対処スキルのようなものや上手な気分転換の方法を持っているのかもしれません。そういうことを訊いていきます。

「少しはマシに思えた時や場所を観察して、来週教えてくださいね」などと宿題のようなものを出すこともあります。

そのような感じで面接時間の50分が終了していきます。

コリをほぐしていると

コリをほぐすといった段階になると、「そういえば」といった感じで、今うまくいっていることやこれからとても楽しいことがあるということを語り始める人がいます。

そんなに楽しいことやうれしいことがあるのに、この人は今まで全くそこに焦点が当たらなかったのだろうか?と不思議に思います。最初は「そんなものは何もない」といった雰囲気でしたから。おそらく、そのようなことに焦点が当てられないほどつらかったのでしょうね。

「復活ののろし」としての来談

カウンセリングは、本当に苦しくて悩んでいるときには受けない人が多いようです。むしろ、それをちょっと乗り越えて、これから回復しようというタイミングで、「まずはカウンセリングに行ってみるか」という気持ちで来談してくれているようです。

「どん底のときには苦しすぎて全く動けなかった」というクライエントさんは多いものです。むしろ少し元気が出てきて、そこはかとなく「復活ののろしを上げたい」という気持ちが出てきて、それがカウンセリングへの来談という行動になっているようです。

単発で来てくれる人のニーズは、復活ののろしを上げるというところにあるのかもしれません。その場合、うまくいっていることや未来への見通しを考えることはその人のニーズに合っているのかもしれません。そうして、また日常に戻って、自力でやりくりしていくのでしょう。

ほっとする「踊り場」あるいは「止まり木」的な場所として、カウンセリングルームを活用してくれる人は多いものです。でも中には「復活ののろし」を上げに来る人もいるように思います。

 

 

 

 

 

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