来談前にAIで
来談する前に、AIに相談している人が増えています。

自分の症状が分からずAIに尋ねたけれども結局よくわからないから来談する人がいます。

カウンセラーに話したい内容がまとまらないために、AIに相談して頭を整理してから来談する人もいます。

苦手な人を理解するために、その人の特徴をいろいろと入力してAIから答えをもらう、という使い方をしている人もいるようです。
だた、必ずしもAIに相談したからと言って、欲しい答えが得られるわけではないようです。
記憶力が悪い
とても記憶力が悪いことを気に病んでいる生徒がいました。なかなか人の顔を覚えられないのです。お母さんに相談したところ脳外科に連れて行ってもらって、CT検査もして、異常なしということでした。
それはそれでよかったと思います。ただそれ以降、お母さんからは「気にするな」と言われるだけになってしまいました。病院にも連れて行ってもらえません。「どこも悪くないのにそんなに気にするなんて、あなたがちょっとおかしい」と言われるようになってしまいました。
AIに相談
「こだわりが強い」とか「神経質」などとも言われていたようです。「お母さんだって人の顔を見てもすぐには名前は出てこない」などとも言われていたようでした。
「だからあなたも大丈夫」と励まされても、分かってもらえない思いばかりが募ります。
この生徒はこだわりが強くて神経質な自分が悪いと思い込んでいるようでした。AIには「こだわりの強さを治す方法」とか、「神経質になる理由は何か」だとか、「記憶力が良くなるためにはどうすればいいのか」ということを相談していたようです。
苦しみの追加
しかし、なかなか「これ」という答えは得られなかったと言います。症状を並べてその苦しさを訴えますが、AIが答えれば答えるほど、どんどん聞きたいことからズレていくようで、分からないことが増えていくようでした。
AIは的確に答えてくれているのに、その答えにピンとこない自分の方が悪いのだろうかと、また新しい悩みが付け加わりました。
不登校へ
それで本人は学校に行きたくなくなりました。そして3日続けて休んだところで、家庭訪問をした担任の先生に自分のこの症状を伝えたそうです。
そしてこの先生から、私はこの子の症状について相談されました。
相貌失認
私は「相貌失認」という症状があることを伝えました。そして、その子にスクールカウンセラーである私を紹介してもらうように先生にお願いしました。
この生徒はすぐに来談しました。私は「相貌失認」という漢字を教えてあげて、自分で調べてみるように促しました。
自分で調べてみたそうです。相貌失認は人の顔を覚えることができない。仕方がないので体格や髪型や持ち物で人を判別することが多い。だから髪型が変わったり、持ち物が変わったりしてしまうと、誰が誰だか分からなくなってしまう。そんなことが書いてあって、それがピタッと自分に当てはまったそうです。
新たな知識も得ました。まず治るものではないこと。治療法は確立されていないこと。みんな自分と同じように対処していること。発症率は意外と数は多くて100人に1人くらいであること。
これでこの子は元気を回復していきました。記憶力が悪いわけではない、自分の努力不足が原因ではないということでホッとしたのです。
言葉で自分をつかむ
相貌失認という言葉があること。その言葉で自分を説明できること。そういう自分に気づけたことは大きな進歩でした。そして似たようなことで苦しんでいる人も意外と多いということを知れたのも心を軽くしたようです。
「やれることはやっている」ということも分かりました。ただ、これからの進路選択をどうすればいいのか、進学先でこの症状を理解してもらうために、どのように説明すればいいのか。そんな話になっていきました。
このようなやり取りを繰り返すことで、本人は次第に回復していきました。学校も休まず登校できるようになりました。
紹介状をお守りに
ただ、親からはあまり理解してもらえませんでした。本人も、病院に行ったからといって治るわけでもないので、今のところはこのままでいいと言っていました。
卒業が近かったので、私は紹介状を書いてこの生徒に渡しました。症状やそれに伴う困り事をやや詳細に書いておきました。それをもっていけば、とりあえずお医者さんにはすぐにわかってもらえるでしょう。
将来、大切な人に出会ったときに自分のことを伝えたい気持ちになるかもしれません。そういう場合に備えて、そこに書いてあることをヒントにしてほしいという願いを込めています。
病院に行きたくなって、自分で病院に行けるようになったら、とりあえずそれをもっていけばいいとも伝えてあります。
この子はそれを「お守り」といって大切に持って帰りました。時々あの生徒のことを思い出します。
