カウンセリングは拡散的推論で

カウンセリング

問題解決の手順

カウンセリングは、クライエントの問題を解決・解消することをめざします。そのためには、つぎのような思考プロセスをたどることでしょう。

問題の描写とデータの収集

来談した目的そして問題を語ってもらいます。専門家はデータを収集するわけです。アセスメントを行うために問題の詳細を尋ねることもします。

問題のアセスメント

クライエントの問題の性質や程度を判断します。問題を分類し、それに対応した理論や研究成果、臨床知見などの専門性を活用してアセスメントします。

介入づくり

アセスメントに基づいて、専門家は自分の専門性を活用して、問題解決の目標や介入法を作ります。

介入

クライエントはその問題解決の目標に向かって、介入法を実行します。

評価とフォローアップ

介入の結果によってその成否を判断します。そして、介入を改善したり修正するのです。それを繰り返し、やがて問題が軽減したら終結となります。場合によっては、その後、フォローアップ面接をすることもあります。

収束的推論による介入

このようなプロセスは収束的思考法による解決と言えます。クライエントの詳細な語りから必要な要素を組み合わせていき、だんだんと一つの答えを導き出そうとする収束的推論を重ねて、正解に収れんしていくのです。

コレラの病原体の発見やDNAの解読、太陽を巡る惑星の軌道の予測などと同じく、パズルのピースがすべてそろえば、一つの正解に収束していくはずだという科学的な前提があるのです。

ですから必要なピースを探り出さなければなりません。そのピースを探してうまく当てはめれば、たった一つの絵が浮かび上がるというわけです。ですからアセスメントはとても重視されます。

拡散的推論による介入

しかしながら、カウンセリングにおいては、収束的推論だけで答えを導き出そうとしても、うまくいかないことの方が多いと思います。いくらたくさんの心理検査をやったとしても、そこから正しい解に収束することはほとんどありません。

むしろ、情報ばかりが多くなって、収拾がつかなくなってしまうでしょう。

クライエントの問題は、その個人だけでなく、仕事や職場、経済状況など、様々な変数によって影響されています。ですから、そのようなものも含めて、拡散的にアプローチしていかなければなりません。

拡散的推論は、問題をさまざまな側面から吟味し、また、さまざまな見方を概観します。そのうえで、問題を解決するための切り口を選んだり、有効で可能な解決策をいくつか(orいくつも)探っていくものです。

拡散的推論とエンパワメント

カウンセリングにおいては、拡散的推論の方が有益なのは、それをすることによって、クライエントをエンパワーできるからです。

「こういう解決策があるだろう」、「それとは違ってこういうものもある」と考えられると、それはクライエントを元気づけることにつながっていきます。

拡散的推論によるリソースの発見

拡散的推論といえども、ただ拡散していくだけでは、やはり収拾がつかなくなります。カウンセラーは、思考を拡散させることでリソースの発見を目指します。リソース志向といえます。

それは、クライエントの語りからその行間を読みこもうとすることです。それは、ちょっとしたしぐさから言外の意味を推測したり、声色の変化からストーリーの色調が変わったことを察知したりすることです。

あるいは、語りに潜在している肯定的側面を引き出したり、暗に語られているポジティブな兆候を確認したりしながら進められていきます。

そのプロセスはゆっくりじっくり進むものです。そしてそのプロセスそのものが、エンパワメントの一つ一つの歩みになっています。

 

 

 

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