スケーリング
「最悪の状態を0点(or1点)、最高の状態を10点としたときに、今何点くらいですか?」
カウンセリングの世界では有名な質問です。スケーリング・クエスチョンといいます。
クライエントさんたちは「うーん、△点くらいかな」と答えてくれます。考える時間は、およそ10秒くらいでしょう。ですから、フィーリングやイメージで答えています。それでいいのです。正確さは必要ありません。
2点です
そのあとが大切です。たとえば、クライエントさんが「2点です」と答えたならば、
「その2点はどのようことができているから2点なのですか?」
「すでにどういうことが起きているから、最低点ではなくて2点なのですか?」
という具合に、「できているところ」や「やれていること」をしつこく尋ねていきます。
とにかく、できている2点のところにとどまります。できていないところのことは考えません。
2点が3点になったら?
2点である理由を徹底的に調べた後、今度は、
「その2点が3点になったら、どのようなことが起きていると思いますか?」
「2点が3点になった時には、何がどんなふうに違っていると思いますか?」
と尋ねます。そして、その3点になるような工夫ができないかを考えて、次なるゴールにします。できるだけ、具体的に思い描いてもらいます。
急いではいけない
この時、すぐに「2点が3点になったら?」と尋ねたくなりますが、ここはグッと我慢です。ゴール設定は急いではいけません。
私は、2点である理由をいろいろな側面から訊きながら、クライアントさんの思考をほぐしていき、その結果、「さっきは2点って言ったけど、もうちょっとましかもしれない」と思い返してくれるといいなと思いながら尋ねます。
ただ、あまりやりすぎるとクライエントさんはしらけてしまいます。しかし、しつこくやらないと乗ってきません。このあたりのさじ加減は難しいですが、クライエントさんの表情や雰囲気をみながら判断することになるでしょう。
意外な答えも
この質問をすると意外なことが起きます。セラピストが「このクライエントさんはもしかすると3点くらいかな」と思って質問をしていても、実際のクライエントさんの答えは「うーん、6点かな」ということが多いのです。
セラピストの見立てよりも、クライエントさんの答えの方が高い点数になることが多いのです。「へー、あれほど深刻そうに話していたのに6点なんだ!」と意外に思ったりします。
良いことは省く
実は、クライエントさんは、カウンセリングの中では、「問題を語らなければならない」、「自分のできていないところやダメなところを話さなければならない」と思っていることが多いものです。だから、できていたりうまくいっている話を割愛しがちなのです。
リソースの話などはしてはいけない、しても仕方がないと思っているのです。そこはできているから問題にはならないのですね。そこにこそ解決を構築するヒントが隠されているのに、もったいないですね。
スケーリング・クエスチョンをすると、クライエントさんがまだ語っていない肯定的な側面に、セラピストが気づく良い機会になることが多いものです。
