スケーリング・クエスチョン
これまでスケーリング・クエスチョンが目指すことと、この質問技法をより深堀した内容について書いてみました。
今回、新たに別バージョン(逆バージョン?)があることを知ったので、そのことについてまとめておきたいと思います。
増井武士・池見陽(2020)『治療的面接の工夫と手順』,創元社.という本に書いてありました。
普通のやり方
「最悪の状態を0点(or1点)、最高の状態を10点としたときに、今何点くらいですか?」
一般的にスケーリング・クエスチョンはこのように問います。
解決構築を目指す短期療法の文脈から生まれた技法なので、解決に向けたゴールを作ったり、とりあえず明日からできそうなことを探ったりするときによく用いられると思います。
ふつうは未来志向で前向き
クライエントが3点と言ったら、その3点に注目します。3点分だけ、何か良いこと・できていることがあるからです。まだ不足している残りの7点には決して目を向けません。
そして、3点が4点になった時、あるいはもっと刻んで3点が3.1点になった時、どういうことが起きていると思うか、どういうことが起きていればその点数になったと分かるかを考えます。
そこで語られることが「とりあえずのゴール」になっていきます。3点→4点へと未来志向で前向きなのです。
その逆バージョン
この本に載っていたのは、それとは逆のバージョンです。
「一番悪かった時を100とした場合、今何点くらい?」と問うのです。悪かった時を100(や10)にするわけです。
こうする理由は、「クライエントは最も良い時よりも、最も悪い時の方が思い出しやすいから」とのこと。
増井先生によりますと、治療を始めてから100以上に悪くなったという人は、ほとんどいないそうです。
「まだまし」の積み重ね
あの最悪だったときよりは「今はまだまし」。「悪いは悪いなりに、最悪よりはまだまし」。「べストではないけれどもベター」。「それなら、まあまあ良し」。「まあいいか」。
たしかにカウンセリングは「まだまし」の長い連続かもしれません。回復は「まだまし」の積み重ね。特に長期にかかわるクライエントさんの回復はこのように進みます。
負の理想自己と同じ
発想は、以前書いた「負の理想自己」と同じであるように思います。
われわれは、「あのようになりたい」という理想の自分を追いかけるよりも、「あのようにはなりたくない」を思い浮かべて、そこから離れている自分を確認することによって自尊心を得ることの方が意外と多いのではないか、という話です。
こちらも「まだまし」の確認が、「とりあえず今を生きるためのほどよいエネルギー」になっているのです。
まとめ
長期間の心理療法が続いている人や、負の理想自己の方が具体的に考えやすいというクライエントさんに対しては、一つの応用編として、この逆バージョンはハマるかもしれません。
スケーリングクエスチョンは、簡単にできるからこそ応用が利きますし、奥の深いものです。

