カウンセラーの仮説生成法

スクールカウンセリング

子どもの心理

人は言葉ではなく行動で自分の心の状態を表現することがあります。本人は意識せず自然に行動しているつもりですが、行動全体が心の状態を表しているのです。特に子どもでは顕著です。

ですからカウンセラーは、その行動が意味すること、象徴していることに敏感です。

行動が落ちついてきた子

昨年までは、教室で暴言が絶えず、すぐにトラブルになる男の子がいました。小3でした。

浅黒い肌で目は鋭く、表情も険しいものでした。彼の周りはモノが散らばり、行動はすばしっこく、トラブルが起こった時には、当の本人はどこかに行ってその場にいない。まるで野生動物でした。

その子が4年生になり、担任がベテランの先生に変わったこともあって、5月下旬頃にはだいぶん落ち着いてきました。目つきや表情は誰が見ても穏やかなものになっていました。

昨年からこの子と面接していた私も、そのように感じていました。

5月下旬のカウンセリング

そんな彼と5月下旬に話をしました。昨年は座って話などできなかったのですが、この日の彼は何となく落ち着いていました。

そこで私は、「教室では何の勉強をしているの?」、「担任の先生は優しい?」、「最近、落ち着いているようだね」などと話しかけていました。

それに対して、彼は適当に答えながら、教室の後ろにある小さなトランポリンをもってきて、その上にバランスボールを乗せて、その上に腹ばいになって話し始めました。

「おれが落ち着いているって?知らない。そうなのかな。〇〇と離れちゃったから、つまらないんだよね」。〇〇君とは、昨年一緒に騒いでいた子。この子と一緒になると騒ぎが大きくなっていたので、今年は別々のクラスになっていました。

行動が象徴するもの

そんな話をしながらも、彼は右手で壁を押さえ、左手は机の端をもって、何とかバランスをとってバランスボールの上で話しています。

トランポリンの上のバランスボール。その上に腹ばいになって、何とかバランスをとり、身体を微妙に調整しながら、崩れないようにして話をしています。まるで、今の心の状態を表しているようです。

「見てよ、先生。おれは不安定なままだけど、何とかバランスをとってギリギリのところで保っているんだよ。一応、支えがあるから今のところは大丈夫だけど。」

もちろん言葉にはしませんし、本人もこんなことは意識していないでしょう。でも、まるでそう言っているかのようでした。

カウンセラーの仮説

この理解が正しいかどうかなど誰にも分かりません。それを象徴的な表現だと直観的にとらえたカウンセラーの仮説です。直観にすぎません。これが正しいかどうかは他の人に聞いてもらって意見をもらうしかありません。

放課後、担任の先生と情報交換をしました。私はその仮説に基づいて「彼は今のところは、何とかギリギリで保っている感じですね」、「でもどうなるか分からない不安定さは残っているように思います」、「だから、これまでと同じように注意深くかかわっていく必要があるのではないでしょうか」ということを伝えました。

担任の先生もその通りだととても納得してくれました。

周りの先生たちは、彼が落ちついてきたからもう大丈夫と見始めていたようですが、担任としてはまだまだ油断できないという気持ちが強かったようです。予断を許さない状況が続いていると見ているとのことでした。

そこで、注意深く見守っていこうという合意が取れました。

まとめ

心の象徴化(symbolization)としての行動。この行動をどう捉えて仮説にするか。

クライエントの行動は、モノ・ヒトが一体となってコトを呼び寄せます。トランポリンやバランスボール、机や壁。そして不安定さや微妙に調整してギリギリ保っているというコト。

彼の行動を「指導モード」で捉えると、「人と話をするときにそんな態度は失礼である」、「危ないからバランスボールから降りて話しなさい」といったかかわりになって、その象徴することが見えてこなくなります。

行動を「指導モード」ではなく、象徴としてとらえることを「アセスメントモード」と呼べるかもしれません。

その「アセスメントモード」でクライエントの全体を捉えて仮説を作るのが、カウンセラーの仮説生成法です。どのパーツを捉えるかは、その時のカウンセラーの直観がものをいうでしょう。そして全体の仮説的ストーリーに組み立てるのは、カウンセラーが採用する心理学理論がものをいいます。

ですからカウンセラーは、自分の臨床実践と心理学理論の両方から学び続けなければなりません。

 

 

 

 

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