難しいケース
スクールカウンセリングをしていて最も難しいケースは、授業中でも隣の子にちょっかいを出したり、先生の発言を遮って話し始めたり、ルールを守れずいつもトラブルが続くような子どもへの対応です。
小学校の低学年から中学年にかけての子どもたちが一般的だと思います。隣の子の鉛筆を奪って折ってしまった、借りたものを乱暴に扱って壊してしまった、それを注意された相手の子を殴ってしまったと、いろいろなトラブルが起こります。
先生が話を聞こうと思っても、すでに加害者はどこかにいってしまっています。探し出してコトの詳細を尋ねても、子どもの方は自己防衛に徹します。平気で嘘もつきます。そういうことが日常的に起きています。
謝らない
先生が注意しても本人は謝ろうとしません。というより、そもそも注意を聞いていません。興味のある方に気が向いてしまって、先生の話を全く聞いていないのです。ですから、そのことでまた怒られてしまいます。
そしてまた同じようなことが繰り返されているうちに、今度は、その子に触発された違う子どもがくっついて、集団の健康度が低下していくこともあります。学級崩壊につながりかねません。
考えられること
このような症状の原因として考えられるのは、発達障害(二次障害を含む)かアタッチメントの問題(トラウマ反応を含む)でしょう。
この違いを分かりやすくするためにちょっと極端に描写してみましょう。
発達障害の場合
発達障害といっても自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)、学習症(LD)などがあります。普通はいくつかの特徴が混在していると思います。ですので、ここでは発達障害と一括りにします。
発達障害は、脳の神経発達に原因があると考えられています。脳のことですから、場面や相手を選ばず一貫して不適切な行動をとってしまいます。一貫性があります。基本的には家でも学校でも行動は同じです。
また、脳の発達にともなって、その特性はマイルドになっていくこともしばしばあります。
低学年の場合
特に問題となるのは、幼少期から学童期の前半(小3くらいまで)ではないでしょうか。家でも学校でも叱られることが多くなってしまいます。不注意傾向が強いので、叱られてもそのことにあまり注意を向けられず、おなじことを繰り返してしまったり、そもそも指導が入っていないことも多いものです。
そしてまた似たようなトラブルを引き起こしてしまいます。その繰り返し。それで、なかば自暴自棄になって、周りの人を敵のように感じはじめて、上記のような行動につながることがあります。ここまで来ると、発達障害の二次障害という状態でしょう。
発達障害と言っても自閉スペクトラム症や注意欠如多動症などがありますから、その特性を理解して対応することが求められます。
もちろん、ここで書かれているのは発達障害の子どもすべてに当てはまることではありません。ごく一部にこのような子どもがいるというだけです。
アタッチメントの場合
アタッチメントとは、「くっつく」という意味です。ドアの扉と壁をくっつける金具をアタッチメントと言いますが、そのように二つのものをくっつけて、お互いがそれぞれの能力や役割を発揮できるようにする道具です。
アタッチメントの問題として考えると、人と人とを「くっつける金具」がカチッとはまらない状態です。くっつける力が弱い回避型、くっついたりくっつかなかったりと一貫性がない葛藤型などがあります。どちらも二つをピタッとくっつける役割を果たせません。
こちらは養育環境が影響していると考えられています。親が威圧的的だったり、理不尽に叱ったり、ネグレクト気味だったり、ものすごくかわいがったと思ったらポイと捨ててしまうような一貫性のない養育だったりします。
ただし、養育環境は悪くないのにアタッチメント障害のような行動をする子もいます。ですから、かならず養育環境が悪いとは言えない、というのが私の理解です。
過覚醒状態
アタッチメントの問題がこじれていくと、子どもは情緒反応が乏しくなったり、過剰な警戒心が高まり、他者を攻撃する準備状態が作られてしまいます。過覚醒状態です。
いつも周りに敏感で気が張った状態ですから、ちょっとしたことで反応してしまい攻撃行動になってしまいます。”攻撃は最大の防御なり”が染みついているのです。
私たちも、ビクビクしているときに声をかけられると、びっくりして「なに?」と怒ってしうことがあります。常にそんな状態です。
常に周りを鋭く観察し、野生動物のようにすばしっこく敏感で、ちょっとのことで素早く反応。それが衝動的で多動的な行動として表に現れます。
常に”今、今、今”で生きていて、その行動をした後の見通しはなく予測も立ちません。少し先の未来を考えることができないのです。
試し行動をする
発達障害の場合、TPOを選ばす不適切な行動をとります。相手や状況をあまり選びません。一方、アタッチメントに困難がある人は、人間関係に起因していますから相手を選んだ行動をとります。相手を選んで問題行動を起こします。
そして、相手が攻撃しなさそうな人であれば、その人とどの程度かかわって良いかの距離感を探ろうとします。いわゆる「試し行動」をして、どこまで許されるかを試すのです。
対応の基本
アタッチメントの問題への対応は、「安心の醸成」、「安全の担保」、「毅然とした対応」になります。
安心感の醸成
この人といると安心。この作業をしていると落ち着く。これを持っていれば安心。こまったらこの人に聞けば良い、この場所にけばよい。そういう感覚です。
安全の担保
この人は理不尽に攻撃をせず自分を守ってくれる。この場所は見通しがあって安全である。少なくも攻撃されることはない、痛めつけられることもない。そんな安全な人や場所が担保されていること。
毅然とした対応
ダメはダメの一線があること。けっして許してもらえない行動があり、それをすると止められるし、とがめられもする。ただ、その理由は前もって聞いているし、その行動・言動さえしなければ痛めつけられることはない。嫌な思いもせずに済む。
そういう方向に子どもの心のエネルギーを水路づける対応。かかわる大人が一線を守って一貫した対応をしていると、子どもはそこから学ぶことができますし、その学びのプロセスが、子どもの心の中に安心と安全の感覚を育みます。
まとめ
困難ケースを「発達障害」と「アタッチメントの問題」として考えてみました。対応については、発達障害の特性を想定しつつ、安心、安全、毅然とした対応で進めていく。
中長期的な展望に立つことも必要です。このようなことがポイントとなるでしょう。

