心の傷と薬

カウンセリング

カウンセラーの選び方

ネヴィル・シミントン(2025)『カウンセラーの選び方』(筒井亮太訳,晶文社)という本を読みました。カウンセラーにとってだけでなく、クライエントにとっても刺激的でピリッとする内容だと思いました。

簡単にいうと次のようなことです。

カウンセラーはクライエントの精神疾患を治そうとしなければならないし、クライエントの心を強くする援助をしなければならないということ。

クライエントは、自らの精神疾患を治そうとしなければならないし、自分の心を強くするためにカウンセラーから与えられた耳の痛い話に対しても、熟考する構えを持たなければならないということ。

お互い心地よいだけの関係では何も変わりませんよ、それは心理療法とは言いませんよ、ということのようです。そういう関係ならセラピストを変えた方がいいよと呼びかけています。

心の傷

この本を読んでいて、昔、スクールカウンセラーが出会う心の傷ということについて書いたことを思い出しました。

セラピストが治すにしても、心は見えませんから、それを身体の傷を使って比喩的に考えたものです。

この傷は外科的なものと内科的なものを想定しました。まずは外科的なものから。

心のとげ

これが嫌、あれが苦しいという棘が刺さっている状態。それを取り除くとすぐに回復するレベル。小学校低学年の子は、「先生、あの子がこういう嫌なことをした」「先生、あの子がこういう嫌なことを言った」と不満を先生に訴えますが、こういうものです。

先生たちが教室の中で素早く棘をとって治していることが多いと思います。

心の切り傷

カッターで指を切ってしまった、転んですりむいてしまったというレベルの傷。消毒して薬を塗って絆創膏を貼ります。

心の傷の消毒(傾聴)・薬の塗布(解釈)・絆創膏(勇気づけ)のところがカウンセラーが行うことです。クライエントは傷をかばいながら普通の日常を過ごせるレベルです。

傷が表皮ではなく真皮にまで及ぶ深い場合は、感染症にかかったり、膿んでしまったり、傷口が気になって触ってしまったりして、なかなか傷が治らないこともありますので注意が必要です。

その場合であっても処置は変わらず、消毒(傾聴)・塗布(解釈)・絆創膏(勇気づけ)となるでしょう。ちなみにシミントンはセラピストの解釈を薬と表現しています。

心の骨折

ギプスで固定して日常生活にもかなり支障があり制限もあります。2~3か月あるいはそれ以上の長期的な対応が必要になってきます。

本人は学習意欲はあり友だちもいる。しかしなぜか教室に入れない。だから空き教室で過ごしている、保健室登校をしているといったものを例として想定できそうです。その状態を安定させて回復を待つしかありません。このような場合は、リハビリ(教室復帰)も視野に入れておく必要があるでしょう。

ここまでは、外科的な症状でした。その特徴は、最近、ここで、外とのやり取りによって傷を負い、傷にはダイレクトにかかわれます。

内科的な傷

それに対して内科的な傷もあります。精神科医が対応するような精神疾患を患った状態はこちらに起因することが多いでしょう。原因不明なことがほとんどです。

最近の出来事が症状を引き起こす原因というよりも、これまで長年培ってきた身近な人との関係性やその中で培われてきた信念、そして心の使い方(心のどこかを麻痺させたり、ある心の部分を切り離して遠くにおきざりにしたり)などが影響していると想定されます。

心の中にあるいろいろな要素が反応しあって、化学変化を起こして問題が生じているのです。原因はかなり昔をたどっていく必要がありそうで、もはやダイレクトに傷にかかわることは難しい状態です。

いわゆる心的外傷(トラウマ)もこちらに入ると思います。理解不能な圧倒的な不安や恐怖、怒りや悲しみ、喪失感などもあると思います。遺伝的な要素がかかわるのもこちらに分類できるかもしれません。

スクールカウンセリングでは難しい

このような特徴をもつ内科的な傷には、スクールカウンセラーだけの対応では不足していて、医療との連携が求められるレベルだと思います。

この場合の心理療法は、学校ではなく、しっかりとした治療構造のもと、定期的なセッションを設けて、継続的に支援することが必要になるでしょう。

薬(解釈)の違い

薬(解釈)にも内服薬的なものと外用薬的なものがあると思います。

深層心理を中心とした薬は、内服薬(解釈)になると思います。精神分析などでいう解釈です。長い時間をかけて心の中の要素に効いていきます。

こちらの薬は、クライエントにとって耳の痛い話や受け入れにくい内容もあるでしょう。しかしシミントンはそれを熟考するようにとクライエントに求めています。

それに対して、切り傷で塗布する外用薬的な解釈もあると思います。こちらはリフレームをしたり、新しいストーリーを構築したり、認知の偏りを指摘したり、ということになるでしょう。クライエントにとっても説得力や納得感があると思います。

まとめ

カウンセラーは治そうとして、クライエントは治ろうとする。当たり前ですがそのことはつい忘れがちです。そしてお互い心地よさばかりを求めてしまう。確かにそうだなと反省。

スクールカウンセラーが対応できる範囲は外科的な傷まで。病院やクリニックでなされる心理療法は内科的な部分も含まれるように思います。

 

 

タイトルとURLをコピーしました