アタッチメント
赤ちゃんの心には、アタッチメント(くっつくこと)によって、安心と安全の感覚が育まれます。そして、この安心と安全の感覚が育ってこそ、「探求心」や「外に向かう力」が育っていきます。
このことは子どもだけでなく大人にも当てはまります。だから、会社でも学校でも心理的安全性が重要と考えられるようになりました。そのほうが生産性が高まるのですね。
その基礎になるのは、くっつく対象(アタッチメント対象)との良質な関係です。このアタッチメント対象が良質であるためには、アタッチメント対象には、次のような性質が求められます。
「敏感性」、「利用可能性」、「協力的」、「受容的」「毅然とした対応」です。
良質なアタッチメント対象
敏感性は、子どもがしめすシグナル(不安だ、どうすれば良いのか分からない、困ったなど)を素早く察知して速やかに反応すること。あまり過敏になる必要はありません。
利用可能性は、物理的に子どもの近くにいること。これによって子どもの心は、いつでも助けてもらえるという安心感で占められるようになります。
協力的とは命令的ではなくガイドすること。「こっちの方が良いよ」、「そっちは危ないよ」、「向こうが楽しそうだね」といったガイドさんの役割。
受容的とは、何でもかんでも認めて受け入れるというよりも、”否定的ではない”ということです。
毅然とした対応
最後は毅然とした対応です。これは「必要なときは」と注を付けておきたいです。「必要なときは」毅然とした対応が必要、ということにです。
「毅然とした対応」のことを心理の世界では「限界設定」や「制限設定」なとど呼びます。限界設定(limited setting)は、子どもとの心理療法では比較的よくテーマになります。
ここでは、「G.L.ランドレス(著)山中康裕(監訳)・江城望(訳者代表)2025.プレイセラピー ―関係性の営み 原著第4版— 日本評論社」から引用してみます。
限界設定の効果
ランドレスによると、限界を設定することには、次の7つの効果があると考えられています。
①制限は、子どもたちに身体的、情緒的な安心感と安全を提供する
②制限は、セラピストの身体的安全を守り、セラピストが子どもを受容する助けとなる
③制限は、子どもの意思決定、自己コントロール、自己責任能力の発達を促進する
④制限はセッションを現実につなぎ止め、「今、ここ」を強調する
⑤制限は、プレイルームの環境を一貫したものにする
⑥制限は、専門的で、倫理的で、社会に受け容れられる関係を維持するのに役立つ
⑦制限は、プレイセラピー用具と部屋を守ってくれる
セラピストの部分を教師と読み替え、プレイルームを教室と読み替えると学校にも十分援用できる考え方です。
制限があるからこそ
制限があるからこそ、①子どもを身体的にも情緒的にも守れます。
また、②制限はセラピストの身体的安全を守ります。これによってセラピストはセラピストとして子どもを受容できるのです。制限があるからこそセラピスト機能が発揮できるということです。
子どもが制限(壁)にぶつかると「どうするか」「どうすべきか」といった③意思決定の機会が提供されます。このとき、自分をコントロールしたり、自己決定したり、自分で結果を引き受けるという責任能力が発達します。そういうことを学ぶ機会が提供されるわけです。
あとは関係性を常識的な範囲内に収める効果(④⑥)や、子どもに見通しを与える効果(⑤)、経済的な損失を防ぐ効果(⑥)なども考えられています。
まとめ
アタッチメント対象が、「必要なときは」毅然とした対応をするからこそ、子どもは守られている感覚になり、制限の範囲内でのびのびできる能力が発揮されていくのです。
それでは、どこに限界を設定するか。そういう疑問が残るかもしれません。一般的な基準としては「自傷他害」のところになるでしょうか。自分を傷つけたり他者を傷つけたりする場合には制限がかかるということです。
そのあたりの見極めはケース・バイ・ケースですから、チームで検討したり、スーパーバイザーの助言を得たりしながら考えていくことになります。
