ケアとセラピーの違い

こころの成長

もう一度読み返す

以前読んだ本をもう一度読み返すことがあります。そういう機会が増えてきているように思います。新しい本から新しいことを発見するのは喜びですが、以前読んだ本の中に新しいものを発見するのもまた別の喜びがあります。

本というのはたくさんの文字が書かれて情報量が満載ですから、おそらく1回読んだだけでは読みつくせないのだと思います。

だから、ある程度時間がたってからもう一度読み返してみると、今度はもっと早く、以前とは違った有益な情報に出会えるものです。

居るのはつらいよ

ということで『居るのはつらいよ:ケアとセラピーについての覚書』(東畑開人 2019 医学書院)をパラパラと読み返していて発見したことがありました。

ケアとセラピーの違いについてです。この二つは全くの別物というわけではありませんが、違いも結構あります。

ケアとは

ケアについて、この著作からいくつか抜き出してみましょう。

「ケアとはそのときどきのニーズに応えることで、相手を傷つけないことです」(p.273)

「ケアとは基本的に個体が変わるのではなく、環境が変わることです」(p.273)

「ケアは傷つけない。ニーズを満たし、支え、依存を引き受ける。そうすることで、安全を確保し、生存を可能にする。平衡を取り戻し、日常を支える」(p.276)

ケアは傷つき立ち上がれない人、体力や気力を失って動けない人に対してまずなさらなければならないことでしょう。

たとえ傷があってもその手当は必要最小限にして、まずは安全と安心を保証して支えることになります。

セラピーとは

セラピーについても抜き出してみましょう。

「セラピーとは傷つきに向き合うことである」(p.274)

「セラピーでは『ニーズを満たすこと』ではなく、その『ニーズを変更すること』が目指されます」(p.275)

「セラピーは傷つきに向き合う。ニーズの変更のために、介入し、自立を目指す。すると、人は非日常のなかで葛藤し、そして成長する」(p.276)

セラピーは傷に向き合い対処します。傷に介入しますから痛いですし我慢しなければなりません。当然、葛藤も引き起こされます。

でもそれを乗り切ることによって成長し、依存状態から脱して自立した個として自らの人生を歩むことができます。その地点を目指しています。

そう考えると、「セラピー」は「ケア」よりも「教育」の方が近い概念のような気がします。

ケアの次にセラピー

ケアは傷つけないことを目指しセラピーは傷に向き合います。順番はケア→セラピーの順番です。

外科手術を考えてみましょう。これから傷や腫瘍に向き合って介入します。しかし、それを可能とするのは患者さんの気力や体力です。

特に体力がないと手術はできません。体力が手術に耐えられない場合、まずは体力の回復を目指すでしょう。そのためになされるのはケアです。

患者さんのニーズを満たし依存を引き受けて支えます。患者さんのニーズに周りが合わせてくれますから、基本的にそこには葛藤は少なく、安心した生活が確保されます。

そして体力が回復してからなされるのがセラピーです。傷に向き合い介入します。何とか機能を回復するためにリハビリもしなければならないかもしれません。

こうしろああしろと言われるかもしれません。相手からの要請に自分を合わせていかなければなりません。自分のニーズを変えていかなければならないのです。

こうして、社会に適応しその中で自らの人生を自立的に生きていけるようになるわけです。

ケアとセラピーの違い

その他にもケアとセラピーの違いについて、東畑氏はいろいろな観点から比較しています(p.277)。

ケア セラピー
傷つけない 傷に向き合う
ニーズを満たす ニーズの変化
やってあげる やらせる
支える 介入する
開放 閉鎖
水平 垂直
構造 人
蓋をする 蓋を取る
依存 自立
生活 人生
安全 成長
生存 意味
平衡 葛藤
平和 事件
素人 専門家
日常 非日常
ケ ハレ
地 図
空間 時間
円 線
風景 物語
中動態 能動態

これらを一つ一つ考えていくことは両者の違いを浮き彫りにすることになると思います。

私は全てを説明できるわけではありませんが、考えてみると面白いと思っています。

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