カウンセリングの回数
カウンセリングが始まって終結に至るまでには、かなりの時間がかかります。一般的にはそのように考えられています。そして、それは決して間違いではないのですが、できるだけ少ない回数で何とかしたいというニーズもまた大きいものがあります。
「今すぐにある程度の方向づけがほしい」であるとか、「そこまで深刻ではないけれど専門家の意見も聞いてみたい」であるとか、「卒業間近なので数回しか会えない」という場合など、いろいろあります。
特にスクールカウンセリングでは、一つの学校に行けるのは月に1回、しかも数時間程度ということがあります。ですから、継続的なカウンセリングではなく、1回の面接で最大限の効果を発揮するようなカウンセリングが求められます。
そして、それは多くのクライエントさんのニーズでもあると思います。
シングルセッションセラピー
シングルセッションセラピー(single-session therapy)という心理療法があります。シングルセッションですから、1回セラピー、単回セラピーということです。
「1回で何ができるか!」というお叱りを受けそうですが、時間をかけた心理療法のことを否定しているわけではありません。ただ、シングルセッションセラピーは、1回のカウンセリングの効果を最大限に高めようと言っているだけであって、そのことに積極的な心理療法であるというものです。
シングルセッションセラピーの利点
シングルセッションセラピーにもいろいろあるようです。今回はその中でもOne-at-a-Time’ Therapy(OAAT Therapy:一回ずつ療法?)に触れたいと思います。このOAAT療法の利点は次のように考えられています。分かりやすくするために、見出しは私がつけてみました。
1.ホットな動機
クライエントが今まさにカウンセリングの必要性を感じているそのポイント、つまり最も変化へのニーズが高まっているときに実施できる。
2.1回での効果
サイコセラピーは、実は1回のセッションだけでも十分であることが多い。
3.お試し的活用
クライエントさんが、一回だけでなくさらにセッションを利用したいという場合は、次のセッションを予約できる。まずはお試しという人にも役立つ。
4.時間経過効果
一回のセッションの後、時間をおくことによって(a)~(d)のような効果を期待できる。
(a)そのセッションから学んだことを消化する時間が得られ、その消化した学びを基礎にして適切な行動をやってみる時間がある(消化の促進)。
(b)ほかの解決法を実験的に試せる(実験機会の確保)。
(c)時間をやり過ごし困ったことが落ち着くまでそのままにしておける(距離の確保)。
(d)そして、それでも必要とあれば次のセッションを予約できる。(セッション機会の確保)。
5.時間の節約
継続的にセッションに来る必要がないので、時間の節約になる。
6.即効性、コミュニティとの近さ
カウンセリングを始めるまでの待ち時間を短縮でき、コミュニティの中で素早く適切に対応することができる。
Dryden, W(2019). Single-Session ‘One-at-a-Time’ Therapy より
1回のセラピーをどうすれば効果的なのかということを考える上で、上の1~6は有益なヒントになりそうです。今の時代の学生相談やスクールカウンセリングでは、このような観点が必要になっているのかもしれません。積極的に取り入れていきたい考え方です。